小説感想文

午前三時のルースター (文春文庫)
午前三時のルースター 著者/垣根涼介

垣根涼介が好きと書いておきながら、この人の本の感想を一つも書いてないことに気づき今更ながらに書きます。

旅行会社の長瀬は知り合いの会社社長に頼まれて、社長の孫のベトナム旅行に同行することになった。
彼は、父親らしき人物があるテレビ番組に映っているのを見たため、父親を探すつもりだった。
少年が父親を捜すことを通じて成長していく、サスペンスストーリー。
まず、この小説の面白みは語り部が主役たる少年ではなく、旅行会社の添乗員ってところだと思います。
というより、この人ってすごくキャラを描くのが上手いんですよ。
どのキャラもきちんと立っていて、仲間内での距離感とか、そいうものがすごく心地良い。
この作品のキャラ達は、それぞれ何らかの悩みをもっていて、まるでもがいているかのように描写されてます。
ストーリーとしては、目新しさこそないものの、張られた伏線はきちんと消化されているし、臨場感もあって面白いです。
サスペンスとしては、ヒートアイランドの方が面白いでしょうが、私は午前三時のルースターの方が好きです。