小説感想文

珍しく注意書き。私はこの本を本当に凄いと思ったんです。だから、この感想文の中ではベタ褒めしてます。そういうのが嫌いな方は、読まない方がいいかと思います。
今回書くのは、予告していたとおりこちら。


模倣犯1 (新潮文庫)模倣犯2 (新潮文庫)模倣犯3 (新潮文庫)
模倣犯(四) (新潮文庫)模倣犯(五) (新潮文庫)


模倣犯 著者/宮部みゆき

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。
やがてバッグの持ち主は、三ヶ月前に失踪した古川菊子と判明するが、「犯人」は「右腕は菊子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけた上、菊子の祖父、有馬義男にも接触を図った。
ほどなく菊子は白骨死体で発見された。
さらに次々と起こる殺人事件を「犯人」はまるで実況中継のように語り出す。
未曾有の連続誘拐殺人事件が、「犯人」の手のひらの上で始まった――


まず最初に言っておきます。この作品は凄いです。
凄く面白い。感動的でもある。圧倒されてしまうほどの作品でもあります。それほどまでに完成され、力のある傑作です。宮部みゆきって人の作品を、私はそれなりに読んでいます。ですが、今回ばかりは頭を下げるしかない。「私はまだまだ宮部みゆきを侮っていました」と。
全五巻という内容は、多いと思います。ですが、この作品にはそれだけの価値がある。それほどまでに、この作品は完成されているものでした。
宮部みゆきの物語の紡ぎ方に、登場人物の作り込みの特徴があります。登場人物の生い立ち、考え方を、事細かに書き並べていくという手法。宮部ワールドの持ち味です。これを、ただ単にジャマだと、読むテンポを遅らせるだけだという人も居ます。でも、私はそうは思わない。
模倣犯という作品において、この作品は一切の無駄を含んでいないと私は感じます。どの一文を欠いても、どの人物の一言を取っても、この作品は恐らく成り立たない。
そこまでの完成度を誇っている作品です。というか、よく映画化する気になりましたね。私なら逃げてますよ。この物語にメスを入れて映像化していくなんて、私は決して思わない。