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ブレイブ・ストーリー(上)ブレイブ・ストーリー(下)

ブレイブ・ストーリー 著者/宮部みゆき

何を書くか悩んで、結局これにしました。
誰にも言ってないことですけど、私が活字に目覚めたのは書店バイト時代、この本を手に取ったからなんです。
宮部みゆき、すげぇ。
そう思って宮部みゆきを読みあさり、さらには垣根涼介やら他の小説に手を出していくことになったのです。
さて、それまで漫画一辺倒だった私を活字の世界に誘い込んだのが、ブレイブ・ストーリーだったというのは、何か感じるものがあったり。
この話は、ファンタジー異世界もの。
自分の運命を変えてみせると、小学五年生の少年亘は、幽霊が出ると噂される建設途中のビルから剣と魔法の世界「幻界」へと旅立つ。
「ワタル」は幻界で様々な過酷な運命を乗り越えていく。
その過程で出会った、ワタルの先を行くもう一人の少年「ミツル」。
ミツルの行方は、ワタルに託された幻界の未来は、そして、ワタルの願いは。
宮部みゆきが描いた、長編ファンタジー
私は、ゲーム好きであり、漫画も大好きな人ですが、最高のファンタジーと聞かれればこれを上げてしまうかもしれません。
まず私が魅了されたのは、宮部みゆきのタッチ。
小説に不可欠だと思うのが、やっぱり物語へと引き込む力だと思うんです。
この話はそれが抜群で、上下巻の分厚い長編であっても苦にならなかったほど。
むしろ、もっと読みたいと、終わって欲しくないと思ってしまうほど。
ファンタジーである以上、物語の中の幻想ほど重要なものはないと思います。
くどくどと設定を語り、難解な世界を描き出すタイプのファンタジーも好きなのですが、この作品は設定説明はあくまでさらりと、簡潔に語られているのみ。
けど、そんな設定を書かなくても、確かにこの作品のファンタジー世界はきっちりと根を下ろしているのです。
それは、世界に描かれている人々がそれぞれきちんと「生きている」からに他なりません。
ここまで推す以上、これは単なるファンタジーではありません。
単なるファンタジーでは、ただ幻界を救って終わりでしょうが、この物語は違います。
自分の願いが正しいのかと思い悩む少年の成長物語であり、沢山の選択肢から事実を選び取るというのは一種のミステリでもあり、臨場感の伴うドキドキ感はサスペンスであり。
どれだけ言葉にしても語れない、そんなテーマ性たっぷりの物語なのです。
読めば読むほど、物語に引き込む描写。
物語の中の幻想。
ファンタジーだけには留まらない、テーマの広さ。
どれを取っても最高峰の小説です。
是非、貴方もワタルと共に、幻界を旅してみてください。

次はコメントでも書かれているように、id:kako-ringさんにお願いしました。