小説感想文

凍える牙 (新潮文庫)
凍える牙 著者/乃南アサ

前々回の小説感想文、「鎖」の前作品にあたる「凍える牙」。
「鎖」に引きずられて読んでみましたが、これもまた面白いものでした。
深夜のファミリーレストランで男の体が炎上した。
遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動隊の音道貴子は相棒の中年刑事滝沢と捜査にあたる。
やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。
被害者の共通点は? 犯人の動機は? そして、野生の獣の正体は?
あらすじにするとこんな感じの、本格ミステリーサスペンス。
ミステリとしては、「鎖」よりは「凍える牙」の方が上でした。
炎上事件と、咬殺事件という、接点のない事件を二つ描き出し、それを繋げていく描写はホント良かったです。
「鎖」にもあった、女性捜査官としての不遇はこの作品の方が顕著でした。
コンビの滝沢という男が、「警察官は男の仕事」という、いわゆるたたき上げの刑事だからですが。
ですが、そんな二人が段々と息が合い、見事なコンビになっていく様は面白かったです。
そして何より、この作品のクライマックス。
目的に向かって走り抜ける獣と、バイクに乗って追う音道刑事。
このシーンはホント、ドキドキものでした。
獣が自分の意志があるかのように描写され、音道と心を通じ合わせているかのような表現はもう素晴らしいの一言。
この作品は、マジで超オススメです。